2023年04月29日
シミズを探している
最近
仕事ばっかりしています(笑)
というか、仕事をしていないときにも仕事のことをクヨクヨクヨクヨ考えているので、
仕事ばっかりしているような体感です。
こういう時って基本悲観的なので、おセンチメンタルな気分になりやすい。
なのでしょっちゅう、シミズのことを思い出します。
元カレでも元ダンでもなんでもないひとりの男のことです。
彼は大学の時のひとつ下の後輩で
四角くて大きな体のうえに、四角い黒ぶち眼鏡をかけた四角い顔が乗っている気が弱くてセンスのいい男でした。
わたしが4年の夏休み、実家に帰ったときにあまりに暇で、一度も作ったことがないのに実家のミシンで「開襟シャツ」を作ったことがありました。
初めてにしては楽しくて素晴らしい出来栄えだったので、もっと作りたくなり
当時付き合っていた同級生のカレシには茶色ベースの気持ち悪いペイズリー柄、シミズには大柄が着ていたら様子がおかしい水玉模様の生地でシャツを作ってあげました。
ふたりとも、
「成岡が作ってくれたシャツを俺のほうが何回も着てる」
と、競って着てくれました。
わたしとカレシは卒業し、東京で社会人になり、シミズは4年生になり
わたしたちは三人で本当によく遊んでいました。
だがしかし次の年シミズは落第してしまい、学生寮を追い出されることに。
わたしはもちろん、自分のアパートのすぐ近くにシミズを住まわせました(笑)
明大前、風呂なしトイレ共同。すぐ近くの駐車場の賃料と同じ家賃38000円のぼーろぼろのアパートでした。
シミズは銭湯に行って、帰りにわたしの部屋に来て、わたしのカレシが来たら一緒に遊びに行ったりしていました。
電車の中で
「わたしの怖い顔だけであの赤ちゃんを泣かせて見せる」
とか
一緒に行ったファミレスで
「絶対できるから食い逃げしよう」
とか
あとは、シミズの前で本気でカレシと喧嘩したりするので
彼はわたしのことを相当エキセントリックな人だと思ってさいなまれていたようで、よく、
「オレの夢に出てきた成岡さん」の話をされました。
シミズの夢に出てくるわたしは、わたしが憧れるほど面白い人でした。
あるときは、色鉛筆で描いた一万円札をひらひらさせながら嬉しそうににやにやして、
絶対に大丈夫だからこれで買い物をしようとシミズをしつこく誘っていたり
またあるときはボーリング場でシミズを呼ぶので振り向いたら、
めらめら燃えるボーリングの球をニコニコしながら持っていて、止めるより先に振りかぶってレーンに投げ、
最終的にボーリング場を全焼させていたりしていたそうです。
ともあれ(笑)
わたしはシミズと一緒にいるのが好きでした。
やさしくて
言葉のチョイスが抜群で
大きくてブサイクで暑苦しくて
わたしのアクションに絶対リアクションしてくれて
わたしの言うことはだいたい聞いてくれて
シミズもなんだかわたしを待っているのが分かって
そのくせそれが、おとこの人がおんなの人に求めてくる何かではなくて
ほんとうに居心地がよかったのです。
きっと、今のようにみんながスマホを持っていたら、そしてラインとかメッセンジャーとかインスタのDMとか
そんなものでなんとなくつながっていたら、わたしはシミズを見失わなかったかもしれません。
シミズはモランボンを売っている会社に(笑)就職して、モランボンの営業さんとして、関東近郊の支社に配属され、東京を去りました。
ふとかけた電話で近況を聞いたら
「会社の車を塀にぶつけて自分がイヤになりました」
と言っていました。それが最後になりました。
程なくわたしも不祥事で(笑)東京を去り、いっとき東京のお友達すべてと連絡を絶ってそれきりでした。
20代のときにあれこれしていたわたしの仲間たちは
いちど音信が途絶えて
そのあとスマホとSNSが発達した時もういちど青春をなぞろうと連絡を取り合い
あの頃が楽しかったことを確認し合ったり、新しい関係性を築きはじめたり
思ったんと違う、と、もう一度音信を断ったり(笑)
必然だと勘違いしながらみっともなくも愛すべき逡巡をしてきましたが
シミズは
潔すぎて「あれは幻だったのかしら」と思ってしまいそうになるほど気配を消してしまいました。
会いたいなー 清水守に(本名)
でも
わたしを見てがっかりされるのもイヤだし
シミズが瘦せてシュッとして結婚して娘とかがいてかわいがってたりしてもイヤ(笑)
でも
やっぱり会いたいなー
そしたら一番に、わたしはまだ夢に出てくるのか、もし出てきてるんなら何をしているのか
聞いてみたい。